The Police Live Report 2008

police

懐かしくなったので以前の来日公演のレポートを引っ張り出してきたみた。早いものでもう9年前になる。

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2008.02.14 @ 東京ドーム

こんな日が来るとは思わなかった。まさか再結成するなんて、生きていればいい事があるものである。。
数年前にMaxeenというバンドのライブを見た時に、The Policeの影響を強く感じながらも、その本家のライブを見ることなどもう叶うはずがないと思っていた。無理もない。84年のツアーを最後に彼らは解散していた。StingとStewartの仲の悪さは有名であり、何時の世界的再結成ブームも彼らを動かすことはなかった。だから今回の気まぐれによる再結成は、願ってもいない出来事であった。

今回の公演にはプレミアム席という設定があり、発売当初からこれ以外考えていなかった。東京ドームの巨大さには既に幻滅しており、中途半端なスタンド席で何も見えずノリ切れずに、欲求不満の不完全燃焼で終わりたくはなかった。また来日する可能性があるアーチストならいざ知らず、今回はThe Policeである。次はまずない。しかしこのプレミアム席、何気に大人気で発売直後に完売。仕方なく慣れないヤフオクで漁り続たが、ある気の良い方からほぼ定価で譲って頂き、何とか公演前日にチケットを手にすることができた。

例によって仕事を早めに切り上げ、水道橋へと急ぐ。入場した時にはStingの息子の前座バンドFiction Planeの演奏が既に始まっていた。息子バンドはなかなか好演していた。顔も声も父親に似ていたが、10分近い大曲を演ったり独自性を出そうとしていた。日本語も上手かった。きっとこの来日で新規ファンをいくらか獲得できたことだろう。

私の席はアリーナB14ブロック。ステージ前から2ブロック目であった。プレミアム席ということで、ステージからは50メートル位の距離だった。アリーナの後方やスタンド席に比べれば格段に近い席である。オーディエンスは30~40代が多かったようだが、棒立ちしている者も多く、ノリはイマイチに感じられた。最も惜しむべくは私の前に立ちはだかっていた185はある外国人だった。私の視界のほとんどを終始遮っていてくれていたので、私は何とかスクリーンではなく彼らの生の姿を見ようと、右へ左へ体を動かしながらステージを追いかけた。

Stewartは白髪が交じりつつも、「Ghost In Machine」のタイトなTシャツで若々しい.印象を受けられた。さらに若々しいのはStingで、袖無し黒Tで依然ムキムキの上腕二頭筋を見せつけていた。Andyはちょっと親父臭い赤い柄シャツだったが、彼は今65歳。その年でワールドツアーを行っているだけでも驚異的である。今回のツアーはこの3人のみ。Synchronicityツアーの際はバックコーラスの女性シンガーなどがいたが、今回はサポートメンバーが一切いない。原点回帰の意味合いもあろうが、単純に自分たちのアンサンブルだけで勝負できるという自信の表れでもあろう。

Stingは今日も古いプレシジョンを持っていた。禿げて年季の入った木目のそれは、The Police現役時代からの愛用のものである。ベキベキいうベース音は全体のサウンドの中で強く主張していたし、時折聴かせる重低音は腹まで響き、個人的に非常に堪能させてもらった。またStingはキーをほとんど変えていなかった。原曲のキーをキープして圧倒的な声量で歌い続け、最後までオーディエンスを落胆させることはなかった。これは解散後もずっとソロとして第一線を走り続けてきた彼の強みだろう。"Don't Stand So Close To Me"を演奏し始める前に「私は昔教師だったんだよ。」と言っていたが、そんなことはここにいる皆が知っているだろう。

また今回個人的に感心させられたのはAndyである。Andyの黒テレキャスターもSting同様昔から愛用のものだ。後半は赤のストラトに持ち替えていたが。ステージアクションも少なくステージ右手か中央で黙々とプレイしていたが、その流麗な指さばきは見る者を魅了していた。特に"When The Wall Is Running Down"のアップテンポな中間アレンジパートでStingと絡みながらのプレイは圧倒的だった。

ヒット曲の多い彼らのライブはまさにグレイテストヒッツだった。しかし慣れ親しんでいたはずの楽曲群は、迫力ある演奏とアレンジにより、どの曲も原曲より遥かにカッコよかった。特に"Driven To Tears"などは新しい発見があったし、"Every Thing She Does Is Magic"は名曲であるということを今回改めて知ることとなった。"Walking In Your Footstep"は大阪でもやらなかった曲だったが、この日は演ってくれていた。"Wrapped Around Your Finger"同様Stewartがパーカッションをせわしなく操り、アレンジを変え、バックには迫力ある恐竜の映像が流れ、予想以上にカッコよかった。

唯一ガッカリしたのは"Reggata De Blanc"でのコールレスポンスがなかったことである。これを楽しみにしていたのだが、Stingが一人でワンコーラス歌ったのみで"Can't Stand Losing You"に戻ってしまっていた。大阪と東京初日で反応が薄かったせいだろうか。レパートリー中全体的にもC&Rはやはり少なかったが、これは残念だった。

初期の名曲"Roxanne"で最高潮に盛り上がり本編終了。アンコールは名曲が続く。後期の"King Of Pain"の次は最初期のアップテンポな"So Lonely"。"Welcome to Andy Summers show ~♪"と変えていたが、反応は少なかった。そして"Every Breath You Take"。これは私が彼らを知った名曲。ストーカーソングとして有名であるが、私にとっては永遠のラブソングである。シンプルなバンド編成は、この曲が持つメロディの良さを引き立たせていた。ここで泣いている人も多かった。

アンコールが終わるとステージに一人残ったAndyが、おどけて笑いを誘う。そして人差し指を立てて、もう一曲だよとアピールすると客席は歓喜に包まれた。そしてこれも最初期の"Next To You"で大団円は終了した。

セットリストに関しては、ここまでグレイテストヒッツなライブだとあまり文句もない。欲を言えば"Be My Girl - Sally"、"Omegaman"、"Spirits In A Material World"、"Synchronicity Ⅰ"あたりも聞いてみたかった気もする。いずれにせよ今回の来日公演、その年齢を全く感じさせない熱の入ったものであり、往年と比較しても遜色のない、またはそれ以上の素晴らしいものであったと思えた。

Setlist
1. Message in a Bottle 
2. Synchronicity II 
3. Walking On The Moon 
4. Voices Inside My Head 
5. When The World Is Running Down 
6. Don't Stand So Close To Me 
7. Driven To Tears 
8. Hole In My Life 
9. Every Little Thing She Does Is Magic 
10. Wrapped Around Your Finger 
11. De Do Do Do De Da Da Da 
12. Invisible Sun 
13. Walking In Your Footstep
14. Can't Stand Losing You  ~Reggata De Blanc
15. Roxanne 
~Encore 1~
16. King Of Pain 
17. So Lonely 
18. Every Breath You Take 
~Encore 2~
19. Next To You 

 

The Police 「Outlandos d'Amour」 (1978)

アウトランドス・ダムール
ポリス
ユニバーサル ミュージック
2014-11-26


1. Next To You
2. So Lonely
3. Roxanne
4. Hole In My Life
5. Peanuts
6. Can't Stand Losing You
7. Truth Hits Everybody
8. Born In The 50's
9. Be My Girl - Sally
10. Masoko Tanga

Stingが一番ロックしている頃を聴きたくなって、最近はこのアルバムをよく聴いている。The Policeの1978年のデビューアルバム。

私が初めてThe Policeを聞いたのは解散後の80年代後半。TVKで放送していたBillboard Top40のYester Hitsで”Every Breath You Take”が流れていて、AndyのギターフレーズとStingのウッドベースが強く印象に残った。その後遡って聴いていき、最終的にこのデビューアルバムに辿り着いた。

高校教師をしながらジャズバンドでベースを弾いていたSting。Animalsなどに在籍し60年代からシーンで活躍していたギタリストAndy Summers。プログレバンドCurved Airでドラムを叩いていたStewart Copeland。この3人が出会いトリオバンドを結成するのだが、これが結果的に最小にして最強の組み合わせとなる。

時代はパンクムーブメントの真っ只中。このアルバムでもM1やM5、M7のように荒削りでパンキッシュな勢いのある曲もある。ただある意味これは彼らにとっては注目を集めるための戦略的なものだった。実際彼らは音楽キャリアも長く、演奏力も他のパンクバンドとは段違いだった。また彼らがここで追求していたのはレゲエであり、M3やM6のリズムに顕著に現れている他、M2のコード進行もBob Marleyの”No Woman No Cry”に由来していた。

この後彼らは世界的な大成功を収める一方で、短い期間の中で急速に音楽性を拡散させていった末、トリオとしての臨界点に至った84年に解散してしまう。その後はそれぞれソロ活動を始める。

特にStingとStewartの不仲は有名だったので再結成はあり得ないと思っていたのだが、2007年にワールドツアーが組まれた時は狂喜した。もう10年ほど前になるが、未だにドームであの3人の熱演を観たことが信じられないでいる。

 

Sting 「57th & 9th」 (2016)

ニューヨーク9番街57丁目
スティング
ユニバーサル ミュージック
2016-11-11


1. I Can’t Stop Thinking About You
2. 50,000
3. Down, Down, Down
4. One Fine Day
5. Pretty Young Soldier
6. Petrol Head
7. Heading South On The Great North Road
8. If You Can’t Love Me
9. Inshallah
10. The Empty Chair
 
昨年末プロモーションのために来日をしていたらしく、色々音楽番組に出演しているのを目にした。彼も今や65歳、先日は初孫も産まれておじいちゃんになったらしいのだが、未だにムキムキしていて若々しいのには驚いた。

そんな彼の新作、元々気にしていなかったのだが、これが17年振りのロックアルバムだというので、思わず買ってしまった。これが思いの外良かった。まず冒頭M1の小気味良いロックサウンドに「おぉ」となる。近作のクラシックやトラディショナルな作風も嫌いではなかったが、やっぱりこうした彼のロックは嬉しい。ハードに攻めるM6や、シリアスな焦燥感が堪らないM8も出色の出来だ。一方で優しげなM4や、アコースティック弾き語りのM7やM10もあったり、曲質の高いバラエティのある楽曲が揃っているが、全体的にはやはりロックアルバムという聴後感が残る。

ボートラでは収録曲の別バージョンと一緒にThe Policeの最初期曲”Next To You”のライブも聴けた。2007-08年のThe Police再結成ツアーの後、ロックから遠ざかっていた彼がまた再びロックモードになっている。6月には来日公演も決まっているらしい。

 

Space Oddity

Great choir of 500 dedicated to the Star Man



in memory of David Bowie 
1947.1.7 - 2016.1.10

Ben Folds Five 「Ben Folds Five」 (1995)

ベン・フォールズ・ファイヴ
ベン・フォールズ・ファイヴ
EMIミュージック・ジャパン
1995-12-13


1. Jackson Cannery
2. Philosophy
3. Julianne
4. Where's summer B
5. Alice Childress
6. Underground
7. Sports and wine
8. Uncle Walter
9. Best imitation of myself
10. Video
11. Last polka
12. Boxing

昨年末はSMAPの解散が話題になっていた。ファンではないので特にコメントはないが、一応便乗して少し関係あるものを取り上げてみる。1996年のキムタク主演のドラマ「ロングバケーション」で使われていたBen Folds Five。

いや実際は使われていたというレベルではなかった。登場人物達がクラシックピアニストで、彼らがBF5の来日公演を観に行くという設定で、バンド名も強調されていた。ドラマ以前からここ日本ではアメリカ本国に先駆けて注目を集めていたのだが、高視聴率のドラマでの露出で人気はさらに沸騰した。ドラマの音楽担当も相当な熱の入れようだったのだろうが、前年にデビューしたばかりの新人だからロイヤルティも安かったはずだと思う。

その音楽は分かりやすく言えばオルタナティブロックに出会ったBilly Joelといったところだろうか。ディストーションに歪んでブンブン鳴るRobertのベースと手数の多いDarrenのドラムの上で、Benのピアノが所狭しと暴れ回る。当時ギターレスバンドは珍しかったが、激しくパーカッシブでありながら非常にメロディアスなBenのピアノを聴けば、このバンドにギターの必要性など全くないことが分かった。3人組なのにFiveとするところも彼らのユーモアだ。

ドラマに使われたM2では自身の哲学を高らかに宣言、本国で人気のあるM6では冴えない青年が開き直っている。こうした等身大の歌詞が勢いのあるポジティブなRock & Rollに乗ってアルバム全編を駆け抜ける。全曲素晴らしいが特にM7は名曲。またメロウなM5やM12もお勧め。

2ndでは本国でも成功を収めるが、バンドは惜しくも2000年に解散。その後もBenは精力的にソロ活動を展開し、2005年の東京厚生年金会館と、2006年のウドーフェスティバルでは私も彼のステージを愉しませてもらった。その後2012年にはバンドで再結成している。


鳥ジャケ

謹賀新年
あけましておめでとうございます。
昨年は個人的にも世の中的にも本当に色々ありました。今年は酉年だそうなので、お気に入りの鳥ジャケットを並べながら、昨年を軽く振り返ってみたいと思います。

elp 
Emerson Lake & Palmer
ELPの記念すべき1st。昨年は1年の内にKeith EmersonとGreg Lakeが相次いで他界してしまいました。

eagles
Eagles
ロックのジャケットでは鷹の使用が一番多いかもしれません。昨年はGlenn Freyも亡くなってしまっています。

crowes
The Black Crowes
カラスと言えばこのバンド。往年のキーボーディストEddie Harschまで他界してしまうとは。。

fnm
Faith No More
個人的に最も好きな鳥ジャケ。18年振りに新作も出てましたが、それは一昨年だったかな。

jihen
東京事変
折り鶴ですが。リオオリンピック閉会式パフォーマンスでは椎名林檎さんがプロデュースしてましたね。

 
今年も宜しくお願いします。

坂本龍一 『Merry Christmas Mr. Lawrence』 (1983)

戦場のメリー・クリスマス
坂本龍一
ミディ
1993-09-21


01. Merry Christmas Mr. Lawrence
02. Batavia
03. Germination
04. A Hearty Breakfast
05. Before The War
06. The Seed and The Sower
07. A Brief Encounter
08. Ride, Ride, Ride (Cellier’s Brother’s Song)
09. The Fight
10. Father Christmas
11. Dismissed
12. Assembly
13. Beyond Reason
14. Sowing The Seed
15. 23rd Psalm
16. Last Regrets
17. Ride, Ride, Ride
18. The Seed
19. Forbidden Colors (ft. David Sylvian)

今日は世の中はクリスマス。正直私は娘へプレゼントを買うこと以外はもはや何も感慨もなく、毎年この時期は街中のあらゆる場所で流れるお決まりのクリスマスソングに辟易してしまっています。

そんな中で私の耳が喜ぶ数少ないクリスマスソングの代表格が、坂本龍一の”Merry Christmas Mr. Lawrence (戦場のメリークリスマス)”。1983年の同名映画の有名なテーマ曲です。

今年はDavid Bowieも亡くなってしまったので、映画も改めて観ました。監督は大島渚、主演がDavid Bowieに坂本龍一にビートたけしという豪華キャスト。個人的には実際このような看守と捕虜の友情なんてものが存在するのかというひねくれた思いで観てしまうのですが、何よりも2人の日英の大音楽家が銀幕の中で熱演対峙しているのは見ものです。

またこれはサントラも聴きもの。まずはやはりタイトル曲M1。舞台は南国でしたが、むしろ降りしきる雪景色に似合います。不思議と何度聴いても飽きない名曲です。またDavid Bowieの小さい弟が透き通る声で歌っていたM8や、兵士達による温かい賛美歌M15も良いです。ちなみにこのサントラは数年前に30周年記念盤も出ていました。

 

ズッコケ中年三人組

ズッコケ中年三人組
那須 正幹
ポプラ社
2005-12


大抵週末の午前中というのは、仮に予定や娘の習い事がなかったとしても、娘とともに妻に家を追い出されます。掃除の邪魔だからパパと何処かに行ってきなさいというわけです。以前はよく公園に行ってましたが、最近は大抵すぐ近くにある児童図書館へ。娘はしばらくここで絵本や伝記漫画などを読んで大人しくしてくれます。

で、そこに並んでいたのが昔懐かしのズッコケシリーズ。ハチベエ、ハカセ、モーちゃんの3人組が毎回騒動を繰り広げる児童書。子供の頃好きでよく読んでいました。と言っても私が知っているのは86年の13作目まで。それが50作目まで続いていたなんて知りませんでした。

最も好きだったのは「あやうしズッコケ探検隊」。ハチベエの行動力とハカセの博学に感心し、当時読みながらワクワクさせられましたが、大人になった今読んでも結構楽しめました。きっと子供椅子に座って児童書にハマっていた私は変なオッさんだったことでしょう。

で、これ実は「ズッコケ中年三人組」という続編があったんですね。小学校6年から一気に40歳まで歳を取っていました。不惑を超えた私が読むべきなのはむしろこっち。コンビニ店長、中学教師、レンタルビデオ店員と、それぞれ家族を持ちながらも冴えない姿がリアルですが、非日常な事件の数々にやっぱりワクワクさせられました。こちらは毎年1歳ずつ歳を取り、50歳になった昨年の「ズッコケ熟年三人組」で完結しています。

ちなみにズッコケの舞台となっている瀬戸内海の町は広島がモデルになっています。作者の那須正幹先生の出身であり、その兼ね合いで原爆関連の著書も執筆されています。

Greg Lake 死去

greg

今年は本当に厄年ですね。今度はGreg Lakeがガンのため亡くなってしまいました。享年69歳でした。

今年の3月にKeith Emersonが自殺したばかりでしたが、同じ年に後を追うようにしてGregも亡くなってしまいました。Emerson Lake & Palmerとしてのキャリアも当然ながら、初期King Crimsonでも印象深いです。高度なベースプレイと力強いボーカルを聴かせたプログレ界を代表するフロントマンだったと思います。

RIP


Hiromi The Trio Project 「Spark Japan Tour 2016」

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先日上原ひろみさんのHiromi The Trio Project 「Spark Japan Tour 2016」のコンサートを観に行ってきた。

会場は東京国際フォーラムのAホール。ロック畑の人間にはこれまで縁のなかった会場だ。中に入ると予想以上に広い上に高低差がスゴい。私の席は2階席の後ろの方だったが、実際には7階の高さから3階のステージを見下ろしている形になる。場内は20~60代まで男女ともに幅広い世代で満席だった。

7時を過ぎて暗転し大歓声の中3人が登場。下手の黒いグランドピアノに赤いチェックのワンピースを着たひろみさん、中央の椅子にはベースのHadrien Feraud、上手のドラムセットにはSimon Phillipsが座った。

オープニングは最新作タイトルトラック”Spark”。静かなピアノのイントロから始まり、ピアノの上に置いてある赤いシンセサイザーを弾いた後に一気にテンポアップしたところにドラムとベースが重ね合わされる。CDで聴いていたよりも格段に迫力のある演奏に一気に引き込まれる。しかも音響が素晴らしい。もうこの最初だけで来て良かったと思わされた。

ひろみさんのピアノはとにかく凄まじかった。とてつもなく早い運指から流麗でメロディアスな旋律を紡いでいたかと思えば、急にパーカッシブに低音を弾き鳴らして攻撃的な音の壁を積み上げる。次々と展開し続けるその驚異的なプレイにこちらは唖然となっているのに、本人は本当に楽しそうに弾いている。腕を振り上げたり、頭を振り回したり、立ち上がったりしながら、表情も本当に豊か。この人ほど楽しそうにピアノを弾く人を私は見たことがなかった。小学生の娘を連れて来ている人を何人も見かけたが、その気持ちも良く分かる。

実際あそこまで弾けたら本当に楽しいだろうと思う。それも最高のリズムセクションとプレイしていたら尚更だ。Simonはひろみさんとそれほど背も変わらない位で意外と小柄なんだなと思ったが、パワフルな上に手数が多い。何拍子なんだか良く分からない複雑なリズムを軽々と叩いていて、ひろみさんのピアノと息もピッタリ。先週も書いたが、この人はこんなに巧い人だとは知らなかった。また通常ジャズドラマーはレギュラーグリップが多いと思うが、ロック上がりだからかマッチドグリップなところが彼らしいなと思った。

Hadrienは6弦ベースの指弾き。6弦だけあって音域が広く、重低音を響かせてリズム楽器として鳴らしたり、ソロの時などはメロディ楽器として高音域を高速で弾いたり、幅広い役割を果たしていた。特にロックと違って邪魔なギターがない分、ベースが自由に動ける空間があり、ベース好きとして充分に堪能させてもらった。彼は元々若いイケメンイメージだったと思ったが、髭を生やしたせいでまるで別人のようにダンディだった。でもどこかでAnthonyのプレイも観たかった気もした。

2曲目に”Player”を弾いた後に、ひろみさんがマイクを持ってMC。「今回は世界中5大陸を回る、とてもマイルのたまるツアーになりました」に場内笑い。メンバーの紹介でHadrienは日本の寿司ざんまいが好きだと紹介すると、Hadrienが寿司ざんまいの社長のポーズで挨拶。Simonはビール好きで、日本に来たらいつも生中と頼むのだそう。

セットリストは基本的には最新作からがメイン。3曲目に比較的静かな”Take Me Away”、続いて少しオールドタイムな雰囲気の”Indulgence”、そして各人弾きまくりの”Dilemma”。聴いていて思ったのは、各曲中間部は結構オリジナルとはアレンジを変えてきているということ。メインリフでスタートとし、中間部にはインプロなソロを入れて見せ場を作り、最終的に再度メインリフに戻ってくるという構成。そんな自由なところがジャズの楽しさなのだと知った。

ここまで1時間15分ほど演奏したところで15分休憩。トイレと喫煙所はスゴい混みようだった。後半はまずSimonが1人だけで登場してきて叩き始めた。そして他の2人も出てきて”What Will Be, Will Be”。ひろみさんは今度は白いワンピースに着替えている。この曲はまたシンセサイザーが登場しアクセントになっている。Simonの音階ドラムが歌うような”Wonderland”が演奏された後、SimonとHadrienが下手へと引っ込む。

1人になったひろみさんがマイクを手にして、ソロ曲”Wake Up And Dream”の曲紹介。6歳でピアノを弾き始め、子供の頃から人前で演奏することを夢見てきたエピソードを話し、「夢を叶えてくれた皆様に感謝致します」と深く頭を下げた。そんな彼女の誠実さに感動したが、実際にその夢を実現は彼女の自身の努力と才能による必然的な結果であると思わずにはいられなかった。そうして始まったこの曲のプレイは、それまで聴いたことのなかったような静かなタッチで、優しさと繊細さに溢れていた。しかし面白かったのは、てっきりクラシックだと思っていたこの曲ですら、中間部はアレンジをしてきており、やはりこの人はジャズなんだなと感じた。

かなり長めのSimonのドラムソロをフィーチャーした”In Trance”では改めて各人の超絶プレイを披露して、大歓声のうちに本編終了。観客の拍手が見事に揃ったアンコールに応えて3人が再登場。Simonとひろみさんがピアノを叩いて”All’s Well”イントロクラップのリズムを鳴らす。アンコールの手拍子からつながりやすかったはずだが、リズムが難しいため場内なかなか揃わないのはご愛敬。最後の曲はリラックスした雰囲気の中で楽しげに演奏されて、全てのセットが終了した。最後は大歓声の中3人肩を組んで挨拶。この日初めて観たジャズの公演だったが、自分にとって新しい世界が開かれた気がした。そんな機会をくれたひろみさんに感謝。

1. Spark
2. Player 
3. Take Me Away
4. Indulgence
5. Dilemma
~break
6. What Will Be, Will Be
7. Wonderland
8. Labyrinth
9. Wake Up And Dream
10.In A Trance
~encore~
11. All's Well

 

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